編曲と指揮を担当された岡 留美さんに訊く。

2013年の世界記録挑戦に続き、課題曲の編曲と指揮を、岡 留美さんにご担当いただきました。アレンジの工夫、指揮をしながら感じたことなどを伺いました。(2019年10月)

 

 

マンダリンエレクトロン(以下、ME):2013年の世界記録挑戦に続き、岡さんには課題曲の編曲と指揮をお願いしました。まず課題曲について伺います。岡さんの編曲についてはマトリョミン合奏、テルミン重奏などで様々拝聴しています。本当に才能に富んでいて、素晴らしい内容で感服しています。今回はベートーベン「歓びの歌」でしたが、テルミン100年に際し奏でることにおいて、岡さんの中での狙いなど何かございましたか?

 

岡 留美(以下、岡):今回は世界記録更新への挑戦、そして、テルミン100年の記念すべき年という事で、挑戦する前向きな気持ちと喜びを感じる幸せな気持ちが、演奏で表現出来ればいいなぁと、思っておりました。「歓びの歌」は、まさに今回の為に作曲されたかのような、ピッタリな曲でした!誰もがメロディを知っているこの曲なら、演奏する時に想いを込めやすいのでは、とも思いました。

 

ME:一番がユニゾンで二番からハーモニーになり、五番で転調するなど、構成もドラマチックです。具体的な構想などございましたか?

 

岡:ストーリーが見えるような編曲をいつも心掛けているのですが、今回は、皆さんのテルミン・マトリョミンとの出会いから記録挑戦までのストーリーを思いながら編曲しました。

 一番のユニゾンは、それぞれのテルミン・マトリョミンとの出会い、出会った時の喜びを感じて頂けたらと思いました。

 二番、三番は、それぞれ少しずつハーモニーが変化してリズムも細かくなっていきます。練習しても思うように上手く弾けなかったり、難しさにも直面して挫折感などを感じてしまう時でしょうか。。

 四番はswingのリズムです。4thパートがリズムをリードしていてハーモニーもより複雑になっています。ギネス世界記録挑戦へ向かう気持ち、喜びだったり緊張感だったり不安だったり、、そんな気持ちを抱えながら五番へと繋がっていきます。

 五番は、ニ長調に転調します。(一番から四番まではト長調)ニ長調は、ドイツ語でDdurと表記され、神をイメージする調としてよく使われています。私達にとって神さまのような存在のテルミン博士に届きますように!と、想いを込めて、最後の五番は、この調にしました。きっと聴いてくださったと思っております。

 

ME:来年はベートーベン生誕250年だそうですが、天国のベートーベンも喜んでいるでしょうね。

 

 

ME:次は指揮についてお聞きします。2013年もそうでしたが、岡さんは指揮を担当されました。今回は当時と比べ、何か違いなどありましたか?

 

岡:前回よりも曲のテンポが速かったので、皆さんにちゃんと拍が伝わるのか、不安がありました。でも、竹内先生が指揮振りのビデオを作って下さり(前回もですが)、皆さんがそれを見て練習してくださったおかげで、何とか、本番を終える事が出来ました。また、竹内先生作の光る指揮棒も、後方の席からもよく見えたようで、指揮棒にも助けられました。ありがとうございました!

 

ME:前回の「Amazing Grace」に比べテンポも速かったので、音楽の内容と相まって躍動感がありました。本番の演奏は皆聴診器をかけていますが、唯一岡さんだけが最もよい場所で聴いています。指揮をしながら耳にしたみなさんの演奏はいかがでしたか?

 

岡:あの時の音は、とても素晴らしい感動的な音楽でした!私にとって忘れられない宝物のような音楽です。

 音が響く素敵な空間で、皆さんが想いを込めた音は、とても輝いて素晴らしい音楽になっていました。何度も感動しながら棒を振っていました。感動で胸がいっぱいになり、合図を出すタイミングを間違えそうになって、少し遅れてしまった所もあったりで、すみません(笑)

 最後の音も、まだ終わってしまいたくなくて指揮振りビデオよりも長くしてしまいました。こちらもすみません(笑)

天にも届いたと確信出来るような、神さまの近くに行けたような、そんな音楽でした。

 

ME:あの感動はあの場にいた人にしかわからないでしょうね。編曲に指揮にと、ありがとうございました。