テルミン演奏の厳しさは、脳の「報酬」に繋がるか?

 「脳の再編」の可能性を説かれる中澤公孝先生の研究室に赴き、被験者として実験に参加してきました。先日は、中澤先生による実験結果の分析結果を伺ってきました。

 麻痺している右腕の上腕二頭筋の緊張が大きいことは実感がありました。一旦緊張状態になると、緊張状態が続いてしまうことは実験結果からも明らかでした。
 麻痺している右腕を制御する際は、通常、反対側の脳の野が活性化しますが、同じ側の脳の野も活性化していることがMRI画像で分かりました。これが麻痺側の手を助けているのか、邪魔しているだけなのかはわかりませんが、明らかに健常者には見られない脳の使い方をしていることが分かりました。

 中澤先生の研究室では、パラアスリートだけでなく、楽器奏者やリハビリも研究対象にされているとのことでした。その中で、リハビリの効果を左右する「情動」も研究対象とされていることを伺い、その洞察の深さと慧眼に深く感服しました。

 私はテルミン演奏を左右の手の役割を入れ替えてまで取り組んでいます。その過程でノイローゼ一歩手前まで追い込まれました。テルミンは楽器の側に音の高さの基準がなく、己の感覚と動作で音を決めます。一音ごとに天国と地獄、有頂天と奈落を行き来しています。感受性にも依ると思うのですが、自分の不甲斐なさを呪い、麻痺前はこんな音色ではなかったと、理想と現実の音印象の差に落胆することが多い。このネガティブな思いが「報酬」としてモチベーションに転じ、リハビリ効果を引き上げてくれる可能性があるのではと、密かに考えています。

 NHK名古屋様の一連の同行取材は終わりました。番組にまとめられ、11月上旬に放送予定とのこと。

 中澤先生、研究室の皆様、実験と結果の解析、そして分析お疲れ様でした。大変興味深く、エキサイティングなひとときでした。普段退屈しがちな私の脳も、大喜びだったことと思います。

 


2022.11.22NHK名古屋「まるっと!」で紹介されました。

https://www3.nhk.or.jp/tokai-news/20221122/3000026107.html

 

webページはこちら。

https://www.nhk.or.jp/nagoya-blog/200/477039.html