新時代の扉を開ける

 テルミンは発明から100年を経ましたが、今回のビデオクリップの制作を通して、新時代へと続く扉を開けた手応えがあります。今回のビデオクリップは発明100周年記念CD制作がベースとしてあります。これまで足踏み状態にあった演奏技量水準を一気に引き上げることができましたが、これにはコロナの外圧が要りました。
 コロナがなければいつものように集って練習し、いつものように録音していたでしょう。取り組みも浅く、時間の制約もあり、それまでと変わらず「そこそこ」な出来だったしょう。それが我々ができる限界と感じていたかも。それをレッスンも録音もリモートに切り替えることで、じっくり演奏に向き合えました。特にテルミン重奏に取り組んだ人達はこの期間、無限に続くに思えた録り直しに皆苦しんだ。数百回の録り直しなど、イカレています。活動自粛期間は我々を鍛え、テルミンの楽器の真の可能性に気付かせてくれました。

ひばり
亡き王女のためのパヴァーヌ
Pryanik
いのり

 テルミンは音律から解放された自由な楽器。この自由を手に入れて、秩序なきハチャメチャか、ピッチコレクトの枠の中に自ら入ってしまうとは、現代における自由の在り方をみるようです。音に形はありませんが、音楽の美は確かに感じる。美しい曲線をテルミンで描きたいと28年間やってきましたが、仲間と共にそれができるようになりました。現代音楽でもサイケでもガチガチのクラシックでもない、私の考える音楽の美を追い求めていきます。コロナの嵐はテルミンに向けられる幻想も終わらせましたが、新たな時代を幕開けてくれたと考えています。


NHK Worldのfacebookページにて、2019年9月14日神戸で実施された世界記録更新への挑戦の模様のビデオをご覧いただけます。
https://www.facebook.com/nhkworld/videos/328880901248159/