マトリョミンアンサンブル再始動しようと考えています。

 コロナ禍を経て、私のテルミンやマトリョミン演奏の取り組み内容は様変わりし、関わる人も変わりました。私自身、こんなことをしたいがためにマトリョミンを創ったのではないとの葛藤が常にありました。そんな中での岡さんの死や追悼合奏録音があり、私の思いや音楽的な理想をマトリョミン合奏で具現することもできました。
 マトリョミン合奏の集大成とも呼べる録音を創れたので、これまでのわだかまりも吹っ切れて、心機一転マトリョミン合奏に取り組めると考えました。メンバーは私が選び、個人的にお声がけします。

 テルミンもマトリョミンもピアノやギターのように鍵盤や指板といった音の高さの基準が楽器の側になく、自らの感覚と動作で音の高さを決める、極めて身体性の高い楽器です。弾く人が違えば動作が違い、天使の歌声にもお化けが登場するときの音にもなることは音楽学者でなくてもわかっていた。
 テルミンやマトリョミンは音律や音階から解放された自由な楽器です。高い技術と音楽性が備わった上で花開くのが個性であったはずですが、個性礼賛の追い風も受け、自由も個性も独り歩きを始めてしまったようです。ピアノやギターのように励まなくてもよく、技術無しで、楽に自尊心を保てる都合のよい楽器との誤解も浸透させてしまいました。今年でテルミンに取り組み始めて30年目ですが、自らの活動の結果として招いた歪みを正し、本来のテルミンやマトリョミン演奏の魅力を示し得る「テルミン・ルネサンス」を再び興そうと考えています。

 新しい枠組みではペダルでの音量制御を標準にします。当方がこれまで使ってきたペダルは高性能ですが故障し易いので機材の選定を再考します。この件については改めてご連絡しますので、ペダルのご購入はお待ち下さい。旧いペダルをお使いの方は、そのまま使い続けられます。モニターは聴診器を捨て、カナル式イヤホンでします。

 筐体のマトリョーシカですが、新しい枠組みのアンサンブルで用いるマトリョミンは、ClassicやBambinaなどのオーソドックスなマトリョーシカであることを求めます。マミンカやパンダなどのオリジナルペイントや、弊社製でも派生ペイントモデルは不可とします。新しいアンサンブルの活動の方向性や、目指す音楽性を明快に示したいと考えています。

 

2023年4月23日
竹内正実